障害者控除 ~相続税の税額控除④~

相続人が障害者の場合には、相続税額から一定の金額を控除出来る「障害者控除」という制度があります。ここでは、「障害者控除」を使うための適用要件や控除額の具体的な計算方法についてわかりやすく解説していきます。

 

 

1. 制度の趣旨

 

障害者は健常者よりも医療費・療養費等の負担が大きいことを考慮し、生活保障の観点から相続税を軽減する措置が講じられています。

したがって、被相続人(亡くなられた方)が障害者であっても障害者控除の適用を受けることは出来ませんの。あくまでも障害者控除の適用が出来るのは相続人が障害者である場合ですので注意が必要です。

 

 

2. 適用要件

 

障害者控除の適用を受けるためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

 

①相続又は遺贈により財産を取得した者であること

障害者であっても財産を取得していない場合には、障害者控除の適用を受けることは出来ませんので注意が必要です。

 

②財産を取得したときに障害者であること

控除の対象となる障害者は、その症状や程度に応じて「一般障害者」と「特別障害者」に区分され、控除額も異なります。税法上の障害者区分については以下で詳しく解説します。

 

③財産を取得した者が法定相続人であること

遺贈により財産を取得した者であっても、法定相続人でなければ障害者控除の適用を受けることは出来ませんので注意が必要です。

 

④財産を取得したときに日本国内に住所があること

ただし、相続人が一時居住者であり、被相続人も一時居住者又は非居住者の場合には、障害者控除の適用を受けることは出来ません。

また、未成年者控除とは異なり、国内に住所がない場合の例外は設けられていません。

 

 

3. 障害者の区分(一般障害者/特別障害者)

 

税法上の障害者区分は以下の通りとなります。

 

(一般障害者)

  • 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により知的障害者とされた者のうち重度の知的障害者とされた者以外の者
  • 精神障害者保健福祉手帳に記載されている障害等級が2級または3級の者
  • 身体障害者手帳に記載されている身体上の障害の程度が3級から6級までの者
  • 戦傷病者手帳に記載されている障害の程度が次に該当する者
    イ. 恩給法別表第一号表の二の第四項症から第六項症までの障害がある者
    ロ. 恩給法別表第一号表の三に定める障害がある者
    ハ. 傷病について厚生労働大臣が療養の必要があると認定した者
    ニ. 旧恩給法施行令第31条第1項に定める程度の障害がある者
  • 寝たきりで複雑な介護が必要な者のうち、障害の程度が①または③に準ずると認定を受けている者
  • 年齢65歳以上の障害のある者で、障害の程度が①または③に準ずると認定を受けている者

 

 

(特別障害者)

  • 精神上の障害でものの善悪の区別ができない者や区別できても相応の行動ができない者、児童相談所、知的障害者更正相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により重度の知的障害者とされた者
  • 精神障害者保健福祉手帳に記載されている障害等級が1級の者
  • 身体障害者手帳に記載されている身体上の障害の程度が1級または2級の者
  • 戦傷病者手帳に記載されている障害の程度が、恩給法別表第一号表の二の特別項症から第三項症までの者
  • 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定による厚生労働大臣の認定を受けている者
  • 寝たきりで複雑な介護が必要な者のうち、障害の程度が①または③に準ずると認定を受けている者
  • 年齢65歳以上の障害のある者で、障害の程度が①または③に準ずると認定を受けている者

 

 

4. 控除額の計算方法

 

障害者控除の控除額は以下の計算式により算出します。

 

一般障害者の場合       85歳-相続時の年齢)×10万円

特別障害者の場合       85歳-相続時の年齢)×20万円

 

相続時の年齢については、1年未満の端数は切り捨てとなります。

 

具体的な計算例を見てみましょう。

 

(計算例)

・相続時の年齢25歳4ヶ月
・障害者の区分一般障害者
・相続税額1,000万円

 

①障害者控除額(85歳-25歳)×10万円=600万円
②納付税額1,000万円-600万円=400万円

 

(計算例)

・相続時の年齢56歳8ヶ月
・障害者の区分特別障害者
・相続税額1,000万円

 

①障害者控除額(85歳-56歳)×20万円=580万円
②納付税額1,000万円-580万円=420万円

 

 

5. 控除額が余った場合

 

もしも、控除額が相続税額より大きかった場合にはどうなるのでしょうか。

 

余った控除額は、扶養義務者である他の相続人の税額から控除することが出来ます。

ここでいう扶養義務者とは、「配偶者、直系血族(父母や祖父母)及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者」を指します。

なお、それでも余った場合には次の相続へ持ち越すことも出来ます。

 

引き続き具体的な計算例を見ていきましょう。

 

(計算例)

・相続人長男(60歳)、二男(56歳/特別障害者)
・相続税額それぞれ500万円

 

①障害者控除額(85歳-56歳)×20万円=580万円
②納付税額二男 500万円-580万円=▲80万円(納付なし/余り)
長男 500万円-80万円(余り)=420万円

 

 

6. その他の税額控除

 

いかがでしたか。

ここでは「障害者控除」の適用要件や具体的な計算方法について解説してきました。

相続税には7種類の税額控除が設けられていますので、「障害者控除」以外の税額控除についても詳しく知りたい方は以下の記事をご参照下さい。

 

「贈与税額控除 ~相続税の税額控除①」

「配偶者控除 ~相続税の基礎控除②」

「未成年者控除 ~相続税の基礎控除③」

「相次相続控除 ~相続税の基礎控除⑤」

「外国税額控除 ~相続税の基礎控除⑥」

「相続時精算課税に係る贈与税額控除 ~相続税の基礎控除⑦」

 

(2021年4月26日更新)

 

 

 

 

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